何だか安定しない天気が続きますね。
屋外作業が非常に段取りしにくい状況で、工程表を天気予報とにらめっこしながら微調整しています。

さて本日はちょっと深刻なお話です。
以前にも自然塗料のことについて書きましたが、これはご自身が安全だと思い込んで書いていることもあるのでグレーゾーンだと思います。
しかし、今日のお題はどちらかと言うとあえて結論を言わず中途半端な情報で「怖がらせる」ことに主眼が置かれているように見受けられます。そうしたSNSの情報が多いということです。
知らなくても死ぬようなことはありませんが、うっかり信じてしまうと間違った判断になるので、以下十分にご注意の上お読みください。

シックハウス症候群はなくならなかったのか?

2003年7月にシックハウス症候群の対策として改正された建築基準法が施行されました。これによって以降に新築される建築物は法で定められた換気ができる装置を備え、ホルムアルデヒドなどの規制物質を含まないか、含んでいても極めて少ないと実験によって認められた材料しか使えなくなりました。
この改正は私の物件を設計していた時期だったので良く憶えています。何しろ当初の予算には計上していなかった換気装置の追加や材料の変更があったため資金の捻出や設計変更に非常に苦しめられたからです。
この法改正によって市場からも事実上ホルムアルデヒドやその他のシックハウス症候群の原因になるとされる物質が含まれる材料は排除され見掛けなくなりました。「F☆☆☆☆」というマークが付いているのをご覧になった方も多いと思いますが、それが適合材料のマークです。
その後の調査によってホルムアルデヒドなどの物質は減って大幅に規制基準値を下回りました。
しかし、ひとつだけ規制された13の物質のうち減るどころか増える傾向の物質がありました。

増えた物質の正体

結論から言ってしまうと規制物質のアセトアルデヒドが減っていませんでした。
名前だけ聞くと何の物質か分からないかも知れませんが、平たく言うと変化したアルコールです。エチルアルコールは酸素に触れると酸化してこの物質になります。このアセトアルデヒドは皆さんがご存じの二日酔いの原因物質です。お酒を飲むと酔うのはエチルアルコールのせいですが、それが分解される過程でアセトアルデヒドになります。通常、分解酵素で最終的には水と二酸化炭素に分解されて体外に排出されるのですが、分解できる許容量を超えるとあの二日酔いになってしまいます。
このアセトアルデヒドには発癌原因物質の可能性があると言われています。それで建築基準法でも規制物質に選ばれたのでした。
しかし疑問なのは、どうして規制された物質が減らず増える傾向すら見せたかです。国土交通省の調査で使用されていた材料にアセトアルデヒドは含まれていても規制値以内か全く含まれていませんでした。それでも減少していなかっただけでなく、追跡調査でも濃度の変化がなくある一定の濃度を示していました。
一体原因はなんだったのでしょう。

何と木材からも

アセトアルデヒドの発生源を突き止めようと研究しているうちに、様々な場所から発生していることが分かってきました。タバコには多量のアセトアルデヒドが含まれていましたし、一部の外国産家具からも認められました。また酢酸ビニル樹脂やそれを含む接着剤(通称木工ボンド)も加水分解されると発生することがわかりました。
実は最もショックだったのが木材からでも発生していたことでした。針葉樹のトドマツやカラマツ、広葉樹のヤチダモなど多種の木材から発生していました。逆に発生しない木材もありました。
また国産の杉材は、エチルアルコールを塗布すると分解されて、やはりアセトアルデヒドが発生することを森林総合研究所など幾つかの研究チームが発表。東大の環境システム学のレポートではヒノキも同様に発生することが報告されています。その中で特徴的なのがボンドからの発生はホルムアルデヒド0、アセトアルデヒド13.7pMCに対して、ヒノキはホルムアルデヒド66.3pMC、アセトアルデヒド80.1pMCで5.8倍もの高濃度だったことです。住宅のサンプルでも木材由来のホルムアルデヒドが多いことが報告されています。
規制で大幅に抑制できると思ったら、規制値の48μg/m3(0.03ppm)を超えた建築物が出てしまうという思惑違いでした。というのも、このような経緯で発生することは今回初めて分かったことでしたが、実際にはエチルアルコールもアセトアルデヒドも広く添加物として一般に利用されていますし、建築物へは規制されましたが生活用品や家具などには規制がありません。調べてみるとそれこそキリのないほど発生源があったのです。
そこで国土交通省は「換気装置」とセットにすることに執着したのです。

もうアセトアルデヒドの濃度は測定しない?

ところで日本における規制値は正しかったのでしょうか。
新建築基準法が施行された同年、林野庁木材課がWHOに規制値の数値を問い合わせて11月になり回答をもらいます。
何とその解答では50μg/m3は間違いで、正しくは300μg/m3だと言うのです。別に厚生労働省もWHOに同様の問い合わせをして同じ回答を得ています。
日本の規制値は本来300μg/m3だったのが、勘違いから50μg/m3として、それより小さい48μg/m3と6分の1もの厳しい規制値になっていたのでした。林野庁はこの回答から市場の混乱を避けるため、この情報をただちに材木業界に流しました。一方、国交省はこの回答を受けてアセトアルデヒドの測定をしないと発表するに至ります。
平成14年度から測定を開始しましたが予想通りというか、日本の規制が厳し過ぎて全体の10%前後が毎年規制値を違反している結果です。WHOのいう規制値で違反だったのは平成16年と17年に1件だったということです。こうした中、厚労省も「直ちにというわけではないが」としながらも規制値を300μg/m3に変更する検討を始めました。

まぁ気にするな

このように人工起源も天然起源も含めてかなりの発生源を持つアセトアルデヒド。今回、いくつかの発生機構が判明したとはいえ不明なものの方が多いのが現状です。そればかりか「安全安心」が取り柄の「自然派塗料」が大量のアセトアルデヒドを発生させたことをうかがわせる測定結果もありました。天然由来であろうがなかろうが大量のアセトアルデヒドを曝露するのは危険であるのは間違いありません。そこが私が言う「天然は安全という思い込みは危険」なのです。しつこいようですが、安全かそうでないかは天然か人工物かではなく「量」です。だいたい、植物や木も自然にエチルアルコールを生成しているのですから、自然のものは安全が間違いなのは明らかだと思われます。
考え方を変えればこの世に安全なものなどありません。塩だって大量に摂れば死に至ります。塩も到底食べられない量ですが、仮に一定量摂取したら医学的には死亡すると。でも生きるために塩は絶対必要なものです。量が過ぎれば体に必要なものでさえ毒ということなのです。
国産の杉材にアルコールを塗布するとアセトアルデヒドを発生させるのは確かですが、それって普段の生活で容易に起きることではないですよね。私はあります。針葉樹のヤニツボを処理するのにアルコールを使いますから。でも、それもずっと出ているわけじゃないです。分解される前に拭き取られたり蒸発して残りの一部が分解されるんですよ。因みに原因はハッキリとはわかっていないのですが微生物が関与しているのではないかと言われています。

大変長らくお付き合いいただきましてありがとうございます。できるだけ学術的になったり固い表現を避けて平易に書いた積りです。
そろそろ結論行きます。

どうでもいいことは気にしないことです。
気にすること、不安になることによるストレスの方が健康リスクが高くなると思います。
癌の原因は驚くほどあります。それらを全部避けられたとしても、長寿であればあるほど発癌リスクが高まります。癌が日本で多いのは医療が充実していて長寿だからに他なりません。
で、こうしたどうでもいいことを中途半端に聞きかじって、自分だけが気にするならいいんですよ。でもネット上にその情報を流すなら裏付けをかなり取る必要があるのは良識ある人間としての務めです。
おそらくシックハウス症候群のこうした内容は、かなり専門的な論文なりページなりにヒットしているはずです。それなのに断片的な情報だけ載せるのは明らかな作為があるのだと思います。不必要に怖がらせたり不安にしたりだけでなく、果ては自身の価値を上げようと受け取れるような発言の人々は嘘吐きでいい加減な人間だろうということです。化学物質だから危ないなんて言っちゃう人ホント雑って思います。
先の内容からアセトアルデヒドを低減する手段はそう多くない、ということは分かっていただけたと思います。発癌リスクがあるのは確かのようですが、遺伝子群の相違による影響度などは判明していません。そのため現在はラットの実験結果から安全値を求めている状況です。しかも閾値がないものとしてますから、規制値はかなり安全方向に振った値だということは認識しておいていただきたいと思います。
国内のメーカーはアセトアルデヒドを発生させないことから、発生しても吸着するという方向にシフトしつつあります。
日本の技術者の能力を信じましょうよ。


** イベント参加予定 **


【第20回アートマーケット】
日時:9月13日(土)14日(日) 10:00~16:00
場所:大分市荷揚町 3-31 アートプラザ



【vol.38 ものづくり発見市】
日時:9月18日(木) 11:00~16:00(18時までには完全撤収)
場所:大分市中央町2丁目5-3セントポルタビル1F
   (トキハインダストリー若草公園店軒先)



【チャリティー・アートマーケット】
日時:10月5日(日) 10:00~17:00(16:00~撤収開始)
場所:パークプレイス大分1Fセンターステージ周辺
   ※雨天時はパークプレイス大分1、2F館内通路



【モノヅクリサローネ2014秋】
日時:11月22日(土)10:00~16:00
場所:大分市ガレリア竹町ドーム広場