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コイツは不毛だ


私IKEAは野菜に関して慣行農法だろうが、有機農法だろうが、自然農法だろうが全くコダワリなんざございません。素材に合った調理方法で美味しく戴くのは主義ですが、化学肥料だろうが農薬だろうが知ったこっちゃありません。
以前に世界三大文明を長女に教えたときに、余談ながらどうして現在の世界人口は増えることができたのか話しました。
私たちの生きるために必要な原則は衣食住の3つです。どれも欠けては生きて行くのが難しいものです。それ以外に医療の発達も必要なんですが、それ以前に充分食べられることは特に大事なんです。

かつて私たちは狩猟採取の生活を行っていました。動物を狩り、植物の実りを採取しながら採り尽くすと別の場所へ移住していました。そのうちに自分たちで作物を栽培することを始めます。そのためには水の便が良く、土地が肥えていることが必要でした。初期の文明はそのような条件に恵まれた場所で産声を上げたのです。固定の土地で作物を栽培できるようになって初めて「国」の概念が生じます。それくらい、人間が集団で生活するには食の問題が大きかったと言えるのす。

人類が小麦の栽培を始めたのは1万年前ということですが、初期はその農地の地力だけに頼った原始的農法です。やがて焼き畑が始まりますが、いわゆる奪った栄養分を補う「施肥」という行為は、日本では鎌倉時代の中期になって定着するようになります。それまでの農法は「略奪農法」と言います。
室町時代になると治水の問題を村の掟によって取り決める「寄合」が開かれるようになり、より惣村は政治的になっていくのです。こうして安定的に作物が収穫できる改革が起きて収量が増えると、それに従うように人口も増加していきました。しかし、その増加はとても緩やかでした。
化学肥料が登場するのは1840年にドイツのリービッヒが植物が無機栄養だけで成長することを発見し、リン酸が生産されるようになって以降です。産業革命によって増加した人口に対応するために作物の増産が不可欠になったからです。その後、アンモニアの化学合成に成功しアンモニア態窒素が使用されるようになると一気に収量が増加します。戦後の日本においても安定的な作物の確保が優先課題であったため、化学肥料を生産する工場の稼働を優先しました。
どのくらい収量が違うかと言うと、現在10aの水田から収穫できる米は500kgくらいですが、肥料や農薬の技術が進んでいなかった明治時代では200kgほどでしかありませんでした。100年でおよそ2.5倍に収穫できるようになりました。もちろん肥料だけでなく、優良な品種の開発や機械化という部分もありますが、安定的な肥料を供給できる環境になったことはその他の作物でも飛躍的な生産に結び付いて行きます。
しかも、もうひとつ大事なことがあります。
肥料は多過ぎても悪影響があるということです。
植物は自身で消費できないほどの肥料分があるといわゆる「肥中り」という成長不良を起こします。施肥は常に適量でなければならないのです。農薬もそうですが適期に適量使用することで効果を発揮します。そのコストは無視できないので営利農業ほどシビアにコントロールします。

実は猫の額のようなベランダ菜園ですら一度野菜や植物を育ててみると、いかに無農薬、有機肥料栽培が難しいものなのかわかります。ネギ類には黒いスリップスという害虫が発生しますし、レタス類も気がつくと穴だらけにされます。ヨウトウムシやらカメムシやら害虫だらけです。それを手で取り除くだけでも大変なのに、営利栽培の面積でそれをやるとなれば相当な労力になることは想像に難くありません。
そうなのです。
有機農法や無農薬農法、自然農法はとてもとても人手が必要な難しい農法なのです。

しかも、残念なことに味に関しては有機栽培でも不味いものもできるし、慣行農法でも美味しいものができるのは、農業関係者の間では良く知られた事実で、有機物を食べて美味しく感じるのは思い込みによるプラセボ効果によるものが大きいと思われます。

さて、ここで問題になるのは有機肥料と無農薬による農法を標榜すると過剰な人件費はどうやってペイするか、ということになります。単刀直入に言えば、通常の作物より価値があって高額で売れれば良いと言えます。
そこで彼らは化学肥料と農薬を「悪者」にしなければならなくなります。悪者に祭り上げて、いかに自分たちが安全で品質の良いものを生産しているか、それをアピールしなければ価値があると思ってもらえないからです。
しかし実際には先に述べたように慣行農法より有機農法が優る客観的データもなく、農薬に至っては現在使用されるものはかなり安全なものが開発されていて、ほぼ残留農薬の問題を「規定値を守っているなら」考慮しないで済むようになりました。実のところ、彼らがまるで親の敵のように言っているモノには科学的な裏付けがありません。
しかももっと問題なのは、慣行農法に比較して有機や自然農法が収量で劣る点が大きな問題なのです。食の安全は質の問題ばかりに消費者の目が向くと思うのですが、それと同じくらい「量」の問題も考慮しないとたちまち国民が飢えてしまいます。政府が細心の注意を払っている食の安全は量へのこともあるのです。
ある自然農法でのコメの収量は10aあたり300kgほどしかなかったそうです。これは慣行農法の6割程度です。もし全国の田圃が自然農法だったら大変なことになります。記録的な冷夏で外国から緊急に米を輸入する事態になった1993年の米騒動のときでも、作況指数は74ですよ。60になったら騒動どころでは済まなくなるでしょう。
つまり、みなさんが木村さんの奇跡のリンゴを信じれば信じるほど日本ではリンゴが食べられないことになる理屈なんです。

有機農法の野菜を買うか慣行農法の野菜を買うかは、もう個人の選択の自由だと思います。思うんですが、それが冤罪の肥料や農薬のせいだとすると、彼らのビジネスの口上はとても罪深く思えます。恐らく彼らは主張が正しくないことを知っていたとしても「化学肥料は悪い、農薬も悪い」と言い続けなければならない宿命です。
これはかなり不毛です。
その言葉に踊らされる一部の消費者ももっと不毛です。

こうしたことをクラフトの世界でも時折見掛けます。
この素材は安全で…とか、添加物がなんとか…

もういい加減ウザいです、こんな話。正直どーでもいい。
知らない消費者に嘘までついて売りたいのか、と個人的に思うところです。
添加物が入ってないから美味しい?

お前の舌は神かちゅーんだよ。
日本で許されている添加物は1日当たり全部で0.1g未満しか摂取できません。それくらいにしかならないほど、一つの食品に使える量が制限されてるんですよ。それを食品単品で味の違いが分かるってどんな舌だよ。
因みに子どもの頃の塩分制限3gの食事を食べたら、味しないよ。母や叔母が「かわいそう」と思わず口にするような味だよ。
もうさ、お客様を騙すようなことするのはやめようぜ。良いものは良い、で良いじゃん。何か引き合いがないとアンタら自信がないのかよ、と思う、マジで、   と思うんですよ。


本日は「若鶏のブレゼ」
家族よ、喜べ、今日は肉だぞ!
名前はご大層ですが、要は肉にプライニングしてオーブンでじっくり焼いた簡単料理。

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